渡辺菊眞電子美術館 第3展示室

大地に還る家 土嚢建築の部屋

第3展示室 展示作品一覧


芽吹く大地の家-土嚢建築写真館-


3-0、土嚢建築ビジュアルメッセージ


3-1、インド震災復興住居モデル


3-2、インドグジャラート州復興農村モデル


3-3、天理エコモデルデザイニングセンター


3-4、神戸アフガン交流公園施設


3-5、アフガン双極螺旋計画


3-6、転生の泥舟
NICCO琵琶湖モデルファーム内施設)

■土嚢建築とは
 土嚢建築(Earth-bag architecture)とは、文字どおり土嚢ブロックを積み上げて作る建築のことである。土嚢は洪水等災害が生じたときに、応急の堤防形成などに使用される。そのことからも明らかなように、土嚢による構築物は即興性と強度に富む。材料もその場にある大地から直接得ることができ、場所にしばられない展開力を有する。この特質に着目して、さらに土嚢の弱点を補填、克服した工法が土嚢建築なのである。

 基本的には、
1、土嚢に詰める素材として、土に若干のセメントをまぜ、土嚢ブロックの強度をあげること。
2、積み上げた土嚢が、横ズレしないように、土嚢一段積むごとに有刺鉄線をかますこと。
 この2点の改良で事足りるのである。

 
この工法はイラン出身の建築家ナアダ・カリリ(カルアース研究所主宰)が開発したものである。当方は2001年に研究所を視察、さらに2002年にはカリリの弟子で、世界中をフィールドにして、土嚢建築をはじめとする自然建築建設を展開しているJ・ケネディ−(「国境なき建築家集団」主宰)から直接指導を受けてこの工法を学んだ。カルアース研究所では耐震実験もおこなっており、震度8の地震にも耐えうることを実証している。

 この工法の利点は、工法の簡便性にもある。煉瓦造と違い、ひとつのブロック単位が大きいので、積み上げの技術に専門性を必要としない、いうなれば誰でも少し練習すれば、習得できる建設技術なのである。

 事実、2001年から天理大学と共同でおこなった、インド西部地震被災地救援活動プロジェクトでも、建築の知識のない学生や、現地の小学生までも交えての建設となったし、2006年、NICCO(社団法人 日本国際民間協力会)琵琶湖モデルファーム内土嚢シェルター建設においても、建築経験のまるでないボランティアスタッフを中心とした建設となり、ともにそれが可能であった。

 土嚢建築は、構造上の利点からドーム型シェルターが建築単位としての基本になるが、これを核にして、例えば木造との組み合わせも可能であり、その意味でも無限の可能性を秘めた工法といえる。

関連ページ
渡辺豊和建築工房「大地に還る家」

3-0、土嚢建築ビジュアルメッセージ

3-1、インド震災復興住居モデル

20018月竣工

 インドグジャラート州ジャムナガール市において、地元NGOの協力を得て制作されたもの。当州は大震災で多くの村落が壊滅的な被害を被ったが、円形土造住宅であるボンガ/クバのみは何らの被害も被らずに瓦礫の中に屹立していた。その伝統的かつ構造的に頑強な住居形式を土嚢ブロックで展開させたのが当モデルである。「天理モデル」と同サイズの居室が2つとその前方に土嚢方形壁で囲まれた多目的使用の前庭がある。このケースでは竹製木組+茅葺きの屋根が採用され土嚢モデルの応用の広さを示すこととなった。
(設計制作:渡辺菊眞、天理大学生、協力:JJSKS(現地NGO))

 右下は、復興住宅のバリエーションを示す。左が最小単位。この2居室並列前庭付きという構成は、当地の典型的住居に範をとっている。
 
当地のものは居室単位も矩形であるが、この場合はそれを土嚢シェルターを居室単位として適用している。

3-2、インドグジャラート州復興農村モデル 2001年〜
 土嚢製単一住居モデルと土嚢製円環集合住居を組み合せた村落モデル。波打つ集住円環中心部には学校/寺院などの公共施設が位置し、集落外側には建設過程で大地を掘り返して生まれた池が位置しその岸辺を竹林とする。 約300戸からなる村落。再び大地に還ることが意図されたこの村落はインド深層に眠る原型を表出していて現地の人々を感動させた。

3-3、天理エコモデルデザイニングセンター 2002年11月竣工

 天理ビオトープをのぞむ地に建てられた土嚢建築施設。建設中に、この敷地にかつて移築されてた合掌造民家の柱が掘り起こされたのだが、その柱を鎮魂する意味も込めた施設である。
 施設は2つの土嚢ドームを核として構成されている。掘り起こされた4本の柱はそのうちの一つの土嚢ドーム内に屹立し、もう一方のドームから、それを拝むような配置となる。ふたつのドームの中心を結ぶ軸は、正確に南北を向いており、その回りを囲む自由な壁と、不思議な対比を生んでいる。
 この施設建設は、インドで展開した土嚢プロジェクト建設のための訓練の場ともなった。

3-4、神戸アフガン交流公園施設 2002年5月〜
 被災者のみが被災者を救うことができる」というコンセプトに基づいた神戸発アフガニスタン復興支援活動を記念する友好公園のモニュメント。
 全く同じ形状の「土嚢ドーム+彎曲壁面」の2セットを点対称に配置し、中心部に生命力溢れる渦が発生することが意図されている。
 2つの土嚢ドームを貫く中心軸はまっすぐアフガニスタンを指し示し、神戸の大地に立ちながら遠く離れたアフガンへ想いを馳せることを可能ならしめている。一部に木造使用。

(設計制作:渡辺菊眞、神戸市長田区民、
神戸商科大学生、天理大学生、被災地NGO協同センター)

3-5、アフガン双極螺旋計画 2004
  土嚢建築は大地を掘り、土を得て、積み上げ、かたちをなす。建築が完成するとき土を提供した大地は窪む。
 当計画では窪んだ大地と、盛り上がって新たな地形となる建築を、同時に築く。窪んだ大地は貯水池となり、盛り上がった大地は井戸を中心として花弁状に家が並んだ集落となる。
 貯水池まわりには集住ゾーンの花弁状土嚢ドームと全く同じ配置で樹木を植え庭園とする(=庭園ゾーン)。
 庭園ゾーンと集住ゾーンはともに円を描く。そして両者があい交わる位置に螺旋双塔が建つ。この双塔は具体的な機能をもたない。双塔ではあるが一方は基檀から上方へと伸び、天窓をとおして天空に溶けていき、他方は漆黒の闇をたたえ、闇は地下を穿つ。双塔まわりには階段が廻り双塔が接するところで上昇と下降が交換する。二重螺旋を想わせる経路。対なるものが描く螺旋。
 対なるものが対比を生み、対比が両者の差異を際立たせ、対立を生み、時に大地はその歪みから焦土と化すことがある。
 焦土から対立の歪みを取り除き、対なる「ひとつ」へと還元し、それが交感する風景を築きたい。対なるものが交感し手をとって円環を描き、廻転し、螺旋と化す。 螺旋の風景は大地を癒し、大地は再び豊かさを取り戻すであろう。
 大地は宇宙の中にあり、宇宙は螺旋を描くのだから。
 大地に立つ人には二重の螺旋が巡るのだから。
 双極螺旋に人は感応し、大地は呼応し、宇宙へと響いていくだろう。

3-6、転生の泥舟
NICCO琵琶湖モデルファーム内施設)
2006年7月〜2007年春竣工予定
  NICCO(社団法人 日本国際民間協力会)琵琶湖モデルファーム内施設である。琵琶湖モデルファームはかつては不法廃棄物投棄場であり、瓦礫が埋まった死んだ土地であった。
 このファームでは森林整備と有機農業を中心とした環境保全型農林業が行われ、そのことで土地を再生させる試みが展開されている。
 また、それと同時に発展途上国へのさまざまな支援活動の際に移転する技術の訓練の場としても機能している。
 この施設も、土嚢建築工法を海外技術移転するための訓練の場となっている。
 また
完成後はファーム内の研修施設として活用される予定である。
 今回はノーマルなドーム型ではなく、矩形平面かつ木造屋根の混成構造とした。矩形平面の強度的弱点は多数の控え壁で補い、屋根はたとえ崩落しても大事には至らない木造としているところに特徴がある。
 今後壁面緑化など、壁の断熱性能をあげることをはじめ、居住性能上昇のために、さまざまな実験をくり返す予定である。
 単なる仮設を超えた、居住空間としての土嚢建築を目指す。

 一度死んでしまった大地から土を得て、それを袋に詰めて、家となって蘇る。この泥の舟は決して沈まない。

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