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まちに新しい建物がたつ時、以前そこに何があったのか思い出せない。


現代都市の飽くなき更新は大切な記憶を奪っていく。


「水と土との格闘」。新潟のこんな根源的な記憶ですら薄れつつある。産泥神社は新潟の根源を憶う空間である。


都市更新の過程でぽっかり空いた柳都大橋の隙間。このエアポケットのごとき都市亀裂に出現した、水と土(すなわち泥)を憶い、祀る空間。


産泥神社の信仰軸はこの都市亀裂に平行配置される。本殿のどろどろをぬけたその先に、たまさかできた都市亀裂は虚空に溶けて消えていく。その空虚の中で消えてしまった泥の記憶が蘇る。


西暦2012年に2012個の土嚢で包まれた母の胎内のような空間。その中核にドロドロがある。


すべての始まりを孕む場所。そこから我々は生まれた。そのことを常に憶い、畏敬して生きていく。


そんな心の変換の場となることを願って。